10:10、いよいよ前段演習開始! まずは遠距離火力として、航空自衛隊の戦闘機による航空火力の紹介。会場左手から、航空自衛隊/第8航空団/第6飛行隊(築城)のF-2支援戦闘機2機が進入してきました。空自のサービスか、飛来した機体は第6飛行隊創設50周年の記念塗装機でした。尾翼のカラーリングは、同飛行隊のF-86時代の塗装だそうです。


白の台一帯の縦深目標に対し、F-2による対地攻撃が2回行なわれます。演習場の制約上実際の爆撃は実施できないので、あらかじめ仕掛けられた爆薬によって着弾状況を表します。


1回目の攻撃を行なった2機は、上空を旋回して2回目の攻撃を実施します。


2回目の対地攻撃。かなり低空を飛んでいるのがわかります。


爆撃された白の台一帯。映画でも見ているような迫力です。


続いて特科火力の紹介。右手から特科部隊が進入してきました。まず指揮官車を務める82式指揮通信車が先行して進入し、誘導員が射撃位置に火砲を誘導します。特科部隊は火砲とロケット、およびミサイルを装備する部隊で、主に敵の地上部隊に対する骨幹火力として、敵の上陸部隊・集結部隊・砲兵部隊等に対する火力戦闘、および味方の普通科部隊、戦車部隊の戦闘を容易にするための火力支援を行ないます。特科部隊は広い地域に展開し、火力を集中して、敵部隊や施設等を一瞬のうちに制圧する事ができます。


進入した火砲は特科教導隊/第2中隊の155mm榴弾砲FH-70/1門、同第4中隊の203mm自走榴弾砲/1門、同第5中隊の99式自走155mm榴弾砲/2門です。その他、82式指揮通信車1両、87式砲側弾薬車1両も進入しました。FH-70と203mm自走榴弾砲はこの演習場からだと熱海付近まで射撃が可能です。99式自走155mm榴弾砲は最新の国産火砲で、自己位置の評定・照準・弾薬の装填等が自動化されており、速やかに射撃準備を行え、この演習場からだと伊東付近まで射撃する事ができます。


まずは99式自走155mm榴弾砲による、砲弾が地表面で破裂する着発射撃。
右側の99式は砲塔を90度旋回させています。
「自走15榴、効力射4発。方位角5505、射角264。4回連続斉射!」
「自走15榴、斉射ようーい、撃て!」

99式2門が斉射しました。発射煙の先に小さく砲弾が写っているのが判るでしょうか。


三段山中央に着弾。その後も3回続けて斉射。
「最終弾、だんちゃーく、いま!」
「撃ち方終わり!」


特科部隊は本来同じ火砲の中隊ごとに陣地を占領し、射撃を行ないます。ここでは会場広場の203mm自走榴弾砲およびFH-70各1門の射撃とタイミングを合わせ、後方の射撃陣地から中隊主力もしくは大隊主力が射撃し、三段山に同時に弾が落ちるようにします。まず最初に203mm自走榴弾砲の集中射撃。
「自走20榴、斉射ようーい、撃て!」


三段山に着弾。
「だんちゃーく、いま!」


次に FH-70が射撃。特科部隊は通常、火砲10門を基準とする大隊、もしくは5門を基準とする中隊単位で射撃を行ないます。まずは中隊による射撃。
「FH-70、中隊効力射。斉射ようーい、撃て!」


「だんちゃーく、いま!」
続いて大隊による射撃。
「FH-70、大隊効力射。斉射ようーい、撃て!」
「だんちゃーく、いま!」


続いて空中で破裂する曳下射撃により、弾道現示を行ないます。これは砲弾が飛んでいく弾道に沿って砲弾を1秒間隔で破裂させる事により、弾道を確認する射撃です。
「こちら FDC、弾道現示射撃、発動!」
各火砲が射撃を開始。
「弾道現示、開始!……だんちゃーく、いま!」
砲弾がバン!バン!バン!と1秒ごとに空中で破裂していきました。


続いて会場広場と後方陣地の合計21門の全火砲をもって、三段山上空で同時に破裂させる同時弾着射撃。
「こちら FDC。対TOT(同時弾着)、A号発動!」
「TOT20秒前!」
後方陣地と時間差で、会場広場の火砲も斉射!


「だんちゃーく、いま!」
三段山上空に見事な同時弾着を見せました。異なる火砲、異なる射距離で同時に弾着させるためには高い技術が必要となります。


最後に、曳下射撃により三段山上空に富士山の形を描くという非常に難易度の高い射撃。この射撃は21門の全ての火砲、弾薬の操作に100分の1秒の精度が要求されます。
「こちら FDC。対TOT富士、発動!」
「TOT20秒前!」


「だんちゃーく、いま!」
本物の富士山をバックに、三段山上空に見事な特科富士が姿を現しました。この瞬間、観客席からは「おぉ〜!」という感嘆のどよめきと拍手が起こりました。


特科部隊が撤収。新たな任務を与えられたり、自らの射撃によって敵のレーダーなどから評定され射撃される事を避けるため、陣地変換を実施します。FH-70は本来車輌により牽引して移動しますが、今回は短い距離での陣地変換などの例として、自力走行で移動しました。


続いて中距離火力の紹介。最初に進入してきたのは普通科教導連隊/第3中隊の81mm迫撃砲3門と、同重迫撃砲中隊の120mm迫撃砲3門。迫撃砲部隊は普通科連隊において、近接戦闘行動を行なう部隊に密接に連携した継続的な火力支援を行なう部隊であり、砲弾を高い弾道で撃ち出すことにより、山や建物の裏側に隠れている敵を制圧する事ができます。また弾薬の装填・発射が容易なため、一定時間内に特科の火砲よりも多くの砲弾を発射する事ができます。


射撃準備を実施する81mm迫撃砲 L16。
「81mm迫撃砲、射撃命令。点目標射撃、目標機関銃陣地。効力射砲小隊、 観測者FO1、装薬3、瞬発3発、命令終わり。」
81mm迫撃砲は分隊長が指揮を執り、砲手、副砲手、弾薬手の合計4名で砲の設置から射撃までを行ないます。また砲を分解することにより人員による運搬が可能で、車輌が進入する事ができない場所においても陣地を占領し射撃をする事ができます。


81mm迫撃砲の右側で射撃準備を実施する120mm迫撃砲RT。
「120mm迫撃砲、射撃命令。点目標射撃、目標機関銃陣地。効力射砲小隊、 観測者FO2、装薬3、集中、 VT3発、命令終わり。」
120mm迫撃砲は分隊長が指揮を執り、砲手、副砲手、2名の弾薬手、操縦手の合計6名で砲の設置から射撃までを行ないます。普通科部隊が保有する火砲としては最大のものです。


迫撃砲が射撃を開始。
「81mm迫撃砲、小隊特別修正、榴弾瞬発装薬3、方位角第一・5432、第二・5443、第三・5454、3発射角1070、指命15秒、全弾斉射、装填待て」
81mm迫撃砲は三段山中央左に着発射撃を実施。


「120mm迫撃砲、小隊特別修正、榴弾VT 中モード30.32、方位角第一・5426、第二・5434、第三・5442、3発射角1030、指命15秒、全弾斉射、装填待て」
120mm迫撃砲は曳下射撃を三段山左端に行ない、81mm迫撃砲と同時に弾着させる射撃要領を3回続けて行ないます。
「半装填、TOT40秒前…初弾発射、経過秒時30秒」


砲弾が三段山に着弾。
「初弾、だんちゃーく、いま!」
「第2弾、だんちゃーく、いま!」
「最終弾、だんちゃーく、いま!」


「陣地変換!」
迫撃砲部隊はすみやかに砲を撤収し、陣地変換を行ないます。81mm迫撃砲は主要部分を3つに分解してトレーラに積載。


120mm迫撃砲は砲を車輌で牽引するための作業をしています。この後、迫撃砲部隊は縦列を組んで移動していきました。


続いて対戦車部隊による対戦車誘導弾の射撃。対戦車部隊は対戦車火力を発揮して、主に敵の戦車を撃破します。会場には87式対戦車誘導弾が進入、続いて96式多目的誘導弾システムが進入しました。写真は富士教導団/団本部付隊の96式多目的誘導弾システム地上誘導装置。


こちらが富士教導団/団本部付隊の96式多目的誘導弾システム発射装置。この誘導弾はTV画像によりミサイルを誘導、目標手前で一旦上昇した後、戦車上部の装甲の薄い部分に命中させます。


左の台に進入した普通科教導連隊/第1中隊の89式装甲戦闘車が、79式対舟艇対戦車誘導弾を三段山下の目標に発射。装甲戦闘車からの射撃は初めて見ました。
「79式誘導弾、発射機右、三段山下戦車。撃て!」

←戻る 次へ→