続いて84mm無反動砲が対戦車榴弾を射撃。
「84mm無反動砲、対戦車榴弾、黒の台戦車300、指命、撃て!…命中!撃ち方まて、目標確認中!」


「目標確認、84mm無反動砲、発煙弾、目標同じ、指命、撃て!…効果あり、撃ち方やめ!」
最後に射撃した発煙弾は、発煙によって敵の視界を遮り、我の機動を秘匿する場合や敵の射撃を妨害するために使用します。


続いて普通科教導連隊/第1中隊の89式装甲戦闘車2両が会場左手から進入。89式装甲戦闘車はどのような悪路においても機動する事ができ、厚い装甲による高い防護性を持ちます。


89式装甲戦闘車の35mm機関砲による射撃。目標は3の台。
「3の台 装甲車 徹甲、班集中、撃て!」
バンバンバンバンバンバン!と大きな音がして砲弾が3の台へ吸い込まれていきました。
「命中、撃ち方やめ」


続いて対空火力として高射教導隊の87式自走高射機関砲が左の台から射撃。87式自走高射機関砲は74式戦車と同じ車体に、レーダーと2門の35mm機関砲を搭載し、強力な火力を連射で集中する事により、敵航空機を撃墜します。本来なら上空を飛行する航空機を射撃するものですが、演習場の制約上対空射撃はできないため、低空を飛行するヘリコプターを射撃するという想定で、5の台右端の青い標的に射撃します。
「こちら高射AW、5の台方向に敵機。1号追随よし、1号射撃する。射撃ようーい、撃て!」


1号に続いて2号も射撃。
「2号追随よし、2号射撃する、射撃ようーい、撃て!…命中撃墜、撃ち方やめ!」
発砲煙と舞い上がる砂埃で、あっという間に車体が隠れてしまいました。


続いてヘリ火力として第4対戦車ヘリコプター隊のAH-1S対戦車ヘリ2機が進入。AH-1Sは20mm機関砲、対戦車ミサイル、ロケット弾を装備し、強力な火力と優れた空中機動力を発揮して主に敵戦車等を撃破します。


はじめに20mm機関砲の射撃。目標は2の台。
「こちらコブラ、2の台に装甲車確認、射撃する」
「目標2の台装甲車、発射ようーい、発射!……命中、撃ち方やめ」


続いて対戦車ミサイルTOWの射撃。目標は三段山中腹の標的です。
「こちらコブラ、三段山に戦車確認、射撃する。目標三段山戦車、発射ようーい、発射!」
スタブウイングのコンテナからTOWミサイルが勢いよく飛び出し、目標に突進しました。
「命中、撃ち方やめ」


私自身、AH-1SによるTOWの発射は初めて見ました。


続いて戦車火力として90式戦車、74式戦車による射撃。はじめに戦車教導隊/第2中隊の90式戦車1個小隊が左手より進入し、発射された砲弾の運動エネルギーを利用して敵戦車などの装甲を貫く徹甲弾を走りながら2回射撃した後、砲弾の爆発によるジェット噴流によって敵戦車などの装甲を突き破る対戦車榴弾を停止した直後に射撃します。


進入する90式戦車小隊。走行間の射撃は高い練度が必要となります。目標は6の台手前、5の台左、5の台です。
「6の台左戦車、徹甲 小隊集中 行進射、撃て!…小隊、左へ!」
射撃直後に左へ方向転換し、今度は前進しながら射撃。
「目標変換 5の台左戦車、続いて撃て!」


3発目は停止直後に射撃。
「目標変換 5の台装甲車、弾種変更対榴、班集中正面射、止まれ、撃て!」


「命中! 撃ち方やめ」


90式戦車が会場を離脱します。統制の取れた動きが実に見事です。
「後退ようーい、小隊、あとへ!」


続いて74式戦車の中隊射撃。右手から第1師団/第1戦車大隊の車輌が4両進入し、右稜線の射撃陣地を占領しました。


左稜線には中隊長車含む戦車教導隊/第3中隊の74式戦車5両が布陣。目標は4の台右、5の台左、6の台左です。


「警戒方向 3小隊4の台、4小隊5の台から6の台」
「3小隊了解」
「4小隊了解」
「5.6の台左戦車、班集中 正面射、撃て!…命中!撃ち方まて」
「4の台右戦車、班集中 正面射、撃て!…命中!撃ち方まて」


射撃を終え撤収する第1戦車大隊の74式戦車。


前段演習の最後に、第1空挺団隊員5名による自由降下がありました。CH-47から飛び出した隊員は約1,000mを自由降下し、パラシュートを開きます。降下までの機内の様子は会場左右のスクリーンで紹介されました。


BGMはもちろん「空の神兵」。上空では旋回するパラシュートの姿が確認できますが、これは「スパイラル」という急激に高度を落とす技術だそうです。これにより、隊員同士の高度、距離の調整を行なう事ができます。


降下してきた空挺隊員。地上で行なわれている発煙は降下地点を示すと共に、隊員が降下地点における風の方向や風力を確認するための物で、降下長はこの発煙状況により降下地点への進入方法等を決心します。


空挺隊員は本来隠蔽された地域に降下しますが、今回は展示のため会場前広場に降下しています。


5名全てが無事に降下完了。危なげない着地が空挺隊員の連度の高さを伺わせました。以上で前段演習は終了です。


以上で前段演習も終わり、会場では再び施設部隊による整地作業と富士学校音楽隊による演奏が始まりました。曲目は下記の通り。
「儀杖隊
(堀 滝比呂)
「ファイターズ・フューチャー(
陸自行進曲「大空」海自行進曲「軍艦行進曲」空自行進曲「空の精鋭」のメドレー)

そして11:25から後段演習開始。後段演習では陣地占領する敵を富士教導団が総合戦闘力を最大限に発揮して、攻撃する場面を展示しました。


後段演習が始まるまでの間、会場では散水作業等が行なわれました。


後段演習のプログラムは下記の通り。

後段演習
攻撃の場を通じた諸職種共同の戦闘様相の展示

時間等

演習等の内容

主な参加装備品等

11:20〜12:00
航空偵察 ・観測ヘリコプター(OH-1) ・遠隔操縦観測システム(FFOS)
ヘリボン行動 ・多用途ヘリコプター(UH-1) ・オートバイ(偵察用) ・対戦車ヘリコプター(AH-1S)
・輸送ヘリコプター(CH-47J) ・多用途ヘリコプター(UH-60J) ・軽装甲機動車 ・高機動車

偵察活動 ・87式偵察警戒車 ・オートバイ(オートバイ)







攻撃準備射撃 ・203mm自走りゅう弾砲 ・155mmりゅう弾砲 FH-70 ・81mm迫撃砲 L-16 ・120mm迫撃砲 RT
・90式戦車 ・74式戦車 ・89式装甲戦闘車 ・92式地雷原処理車 ・79式対舟艇対戦車誘導弾
・87式対戦車誘導弾
障害処理
前進支援射撃
普戦チームの攻撃
突撃支援射撃
突撃
対逆襲戦闘
戦果拡張 ・全部隊

12:00〜12:30
音楽演奏 ・音楽隊

12:30〜13:30
装備品展示・ビデオ放映 ・演習参加装備品等(観覧席前広場)


「状況開始」
11:25、状況開始のラッパが鳴り響く中いよいよ後段演習の開始。まずは空中からの偵察活動です。遠隔操縦観測システムおよび観測ヘリOH-1が、空中から偵察を行ないます。会場右手約3kmを飛行中の遠隔操縦観測システムについては、会場左右のスクリーンに映し出されました。この観測システムの無人機はほぼ自動で飛行するヘリコプターで、昼夜間における縦深目標の捜索・評定・射撃観測が可能です。観測ヘリOH-1は赤外線センサーや空対空ミサイル4発を装備した偵察能力・対空警戒能力に優れた最新の観測ヘリです。
「こちらオメガ、3の台前方に兵力不明の敵発見」
「こちらオート班了解。降着までの間、警戒頼む」


航空偵察の結果に基づき地上偵察部隊による情報収集が開始されます。まず、敵情監視を行う斥候班が多用途ヘリコプターUH-1に偵察用オートバイを積載し、空路から敵の後方に潜入し偵察を行います。
会場左手からそれぞれオート2両を載せたUH-1J2機が進入してきました。


「こちらオート班、3の台前面の敵は装甲車2および散兵。オート班は地上偵察に移行する。」
降着したUH-1Jから偵察用オートバイを降ろします。


「こちらオート班、降着成功。引き続き敵後方地域の偵察を実施する」
「了解」
ヘリから降りた計4両のオートが、敵後方の偵察に向かいました。

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