海上自衛隊 護衛艦「あしがら」「くらま」艦艇広報 in 高知新港


「あしがら」「くらま」を見てきました!

7月19日(日)、高知県高知市にある高知新港において、海上自衛隊の護衛艦「あしがら」「くらま」の一般公開・体験航海が行なわれましたので、見学に行ってまいりました。先般就役した「ひゅうが」を除けば最新鋭の護衛艦であるイージス艦「あしがら」を見学するチャンスということで、高知来港が発表されてから非常に楽しみにしていた次第です。
当日、朝06:00に岡山市を出発し、瀬戸中央道から高松道、高知道を経て08:30に会場となる高知新港へ到着。さすがに人気の高いイージス艦の来港という事もあってか、すでに多くのお客さんが訪れていました。見学の途中で知ったのですが、「あしがら」は今回が初めての艦艇広報らしいですね。一週間の訓練ののち艦艇広報、さらに一週間訓練して次の港で広報行事があるそうです。「今月は当艦の PR月間なんです」と「あしがら」の幹部の方が仰ってました。
話は戻って、一般公開開始まではまだ多少時間があったので、艦首の方からまったりと外観を見物。岸壁から見て手前に「くらま」、奥に「あしがら」の順で繋留されており、新旧護衛艦の対比を興味深く見学いたしました。「あしがら」は「あたご」型の2番艦として昨年3月に就役したばかりの新鋭艦で、私も本級を見るのは初めてです。同じイージス艦の「こんごう」型によく似ていますが、後部甲板にヘリ格納庫を設けたのをはじめ、砲やマスト、SPY-1レーダーの配置など細部でいろいろ異なっているのが見て取れます。


一般公開開始前の「くらま」「あしがら」両艦。「くらま」もかなり大型の艦ですが、「あしがら」はさらに大型艦であることが見てとれます。


武器操法展示のリハーサルか、艦橋前のCIWSがガコン、ガコン、と動いて最大仰角をとりました。


後部ヘリ甲板上のCIWSも仰角をとっています。


一般公開間近の08:50頃、「くらま」の舷梯前には長い長い行列ができました。
しばらくして公開時間が近付き、私も乗艦待ちの列に並びました。今日の天気予報では曇りのち雨という事だったのですが、良い方向に外れて朝から日射しの強い天候となり、海沿いという事もあってか湿度も高く、ちょっと歩いただけで汗が吹き出す状態。暑い〜! しかも油断して日焼け止めを塗らずにいたので、あっという間に肌がヒリヒリし始めてしまいました。
09:00から一般公開が開始され、舷梯を登ってまずは「くらま」へ乗艦。舷門では乗員が敬礼で「おはようございます!」と出迎えてくれます。こちらも挨拶を返し、まずは前甲板へ。


09:00、いよいよ一般公開開始。舷梯を渡って、まずは「くらま」へ乗艦。


「くらま」の54口径5インチ単装速射砲、52番砲。この砲を積んだ艦も少なくなってきましたね・・・。


「くらま」52番砲の武器操法展示。砲塔がグルグル回り、砲身が上下する様子です。「あしがら」前甲板からの撮影。


「くらま」の74式アスロックランチャー。「きり」型護衛艦まで搭載されているのでまだよく見かける装備ですが、VLS搭載艦の登場でこれも次第に姿を消していく事でしょう。


「くらま」左舷側の20mm機関砲CIWS/ファランクス。Block0と呼ばれるタイプのようです。


「くらま」のMk36チャフ・ロケットランチャー。艦橋後方に装備されています。


「くらま」の衛星通信アンテナOE-82C。米軍の偵察通信衛星フリーサットを利用した米海軍との衛星通信用に装備されています。同型艦の「しらね」では既に後継のUSC-42に換装されているようです。


「くらま」の72式射撃指揮装置1型。5インチ砲の射撃管制用です。レーダー方位盤と光学方位盤を組み合わせた有人の方位盤で、51番砲、52番砲用に2基搭載されています。


「くらま」のOPS-12対空レーダー。対空捜索用三次元レーダーで、マスト中段に垂直に対し18度傾斜させて取付けられています。旧型のミサイル護衛艦に搭載しているSPS-52によく似ています。


「くらま」のスーパーバード衛星通信アンテナ。いまや護衛艦の標準装備といえるアンテナですね。


「くらま」のインマルサット衛星通信アンテナ。国際海事衛星インマルサットを利用して、電話・テレックス・データ通信などを行ないます。


「くらま」の第2煙突上に設置されている射撃指揮装置2型12(FCS-2-12)。シースパロー短SAMの射撃管制用で、白いレドームの中に方位盤が収納されています。


「くらま」のFCS-2-12の光学照準装置。FCS-2-12からは分離して設置されています。
「くらま」の錨甲板や5インチ砲などを見学した後、さらに舷梯を渡って今度は「あしがら」の前甲板へ。 砲のところでは案内の幹部さんにいろいろお話を聞く事もできました。新鋭艦なので機密も多そうだし、艦内の公開は無いかな〜とも思っていたのですが、しっかり艦橋まで見せてくれました。通常の護衛艦に比べて数層多い艦橋構造物のラッタルを登ってようやく艦橋に辿り着くと、見物客が寿司詰め状態で身動きがとれないほどの状態でした。まぁ、その分じっくりと見学はできたのですが。「あしがら艦長」の名札を着けた一等海佐が、お子様に航海レーダー(?)の説明を丁寧にされていたのが印象的でした。


「くらま」前甲板の見学を終え、続いて「あしがら」に向かいます。


海上自衛隊では「あたご」型に初めて装備されたアメリカ製のMk45 Mod4/62口径5インチ単装砲。砲塔のステルス化が計られている他、最大射程が「こんごう」型のオットー・ブレダ127mm砲の約24kmに比べ、38kmまで延びています。反面、最大発射速度は半分の20発/分になっています。


Mk45 Mod4単装砲の砲身付け根部分。手前の箱は初速計測装置だそうです。また、特徴的なのは砲身の上に配置された薬莢排出シュート。近くにいた幹部隊員さんに「飛び出した薬莢が砲身に当たるんじゃないですか?」と聞いてみると、「当たりますよ(^^」と事も無げに答えられました・・・。どうやら薬莢が砲身に当たるのは問題ない事みたいです。


「あしがら」の高性能20mm機関砲CIWS/ファランクス。最新バージョンであるBlock1Bです。IRカメラの装備や制御システムの向上、俯角を大きく取れるようになった事などから、従来の対空目標だけでなく、小型ボートなどの水上目標にも対処できるようになりました。


従来のCIWS/ファランクスとBlock1Bの外観上における、もっとも顕著な違いであるIRカメラ等の光学機器。今後、既存のCIWS/ファランクスもこのBlock1Bに換装されていく予定だそうです。


「あしがら」前甲板のVLS(ミサイル垂直発射システム)Mk41mod20。「こんごう」型が前甲板に29セルのMk159発射機、後甲板に61セルのMk158発射機を装備していたのに対し、「あたご」型では逆に前甲板に64セルのMk158、ヘリ格納庫上に32セルのMk159を備えています。3セル分のスペースをとっていたクレーンを廃止したため、「こんごう」型に比べそれぞれ3セルずつ増えています。


「あしがら」のメインマスト。「こんごう」型の採用したラティスマストを改め、ステルス性を考慮した平面構成のスマートなマストになっています。またマストの先端には、ミサイル護衛艦としては初めてTACANアンテナを搭載しています。


「あしがら」右舷前側のSPY-1D(V)フェーズドアレイレーダー。イージス艦といえばこの八角形のレーダー、と言ってもいいくらい象徴的な装備でしょう。「あしがら」の搭載するイージスシステム/ベースライン7.1Jの眼であり、「こんごう」型の搭載するSPY-1Dよりさらに能力が向上しているようです。お話を聞いた幹部隊員さんは「スパイレーダー」と仰ってましたが、これって一般的な呼称なんでしょうか? 


イージスシステムの対空射撃指揮システムMk99のイルミネーター、SPG-62。スタンダードミサイルの終末誘導を行なうもので、マストの前に1基、第2煙突の後ろに2基搭載されています。
また、「“あしがら”には5インチ砲用の FCSが見当たりませんがなぜですか?」と隊員さんに聞いたところ、FCS-2を使って艦砲の射撃管制をする「こんごう」型と異なり、「あたご」型の艦砲射撃管制はイージスシステムに統合されていて、左のSPY-1Dによって管制するのだそうです。また、上の写真でSPG-62の前に見えるH型の物体はMk46 OSSという5インチ砲の光学照準システムだそうです。

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